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コラムColumn

総合物流施策大綱(2017年~2020年)について考える ②~  物流の透明化・効率化とそれを通じた働き方改革の実現 ~

≪2018.05.29≫

◆はじめに

 前回のコラムでは、サプライチェーン全体の効率化・価値創造に資するとともにそれ自体が高い付加価値を生み出す物流への変革(=繋がる)~競争から共創へ~について考えてみた。

今回は、物流の透明化・効率化とそれを通じた働き方改革の実現(=見える)について考えてみたい。政府が示しているこのテーマでの具体的な施策は以下のとおりである。

①   サービスと対価との関係の明確化を図る

②   透明性を高めるための環境整備を進める

③ 付加価値を生む業務への集中・誰もが活躍できる物流への転換

 これ等の施策は、どちらかというと物流業界がこのままでは顧客へのサービスが十分にできなくなる恐れが強いこと、具体的には物流業界を取り巻く環境条件が必ずしも良好でないことが背景にあり、顧客企業も物流企業もこの認識を持つごとが重要だと国土交通省も指摘している。

◆サービスと対価との関係の明確化を図る

 物流サービスには、保管や出荷作業のような倉庫業務と荷物を顧客に届ける輸配送業務がある。これらのサービスに対する対価については競争関係が激しい場合、勢いコスト競争に陥りやすく、長い目で見ると顧客の満足を得るようなサービスにならないことも多い。

 我々コンサルタントは、倉庫関連業務については作業分析を行ったり、工程改善を実施したりしサービスと対価の明確性を顧客と物流事業者に示せるような活動をしている。具体的には、当該業務について物流業者にゆだねる場合、荷主に代わりRFP(Request For Proposal)作成し、物流事業者からの提案を評価する機能を持っている。これにより、荷主が倉庫業務において満足できる状態にすること、すなわち業務コストも「見える化」をするということである。

 さらに、その業務が常に契約通り遂行されるよう、KPI(Key Performance Indicator)を設定し、荷主と物流事業者の相互確認の上、運営することが「見える化の具体策」であり、サービスと対価の関係を明確化することでもある。

 物流KPIは3つの側面から考えることできる。コストや生産性、品質やサービスレベル、配送条件などである。これらの側面からみて、多くのKPIがあるが代表的なものを以下に数個挙げてみる。

①   コストや生産性の面では保管効率、人時生産性、積載率など

②   品質やサービスレベルの面では誤出荷率、汚破損率、クレーム発生率など

③   配送条件の面では、輸配送貨物事故率、標準LT順守率など

◆透明性を高めるための環境整備を進める

 物流における透明性を高めるとはどういうことであろうか。この項のテーマが最終的に働き方改革につながるような透明性という意味では、物流業界やそこで働く人たちの環境を改善し、働きやすい環境整備とそれに伴う強固な物流インフラの構築なのだろう。

 昔から物流や輸配送業界は他の産業と比べて長時間労働や低賃金といった傾向がみられたが、ECの爆発的発展による配送頻度の急上昇や労働人口の減少傾向といった物流を処理する需給状況が変化し、今のままでは物流処理量の限界値を超えることが現実となってきた。

このため運賃の値上げや積極的なモーダルシフトの試みそして物流労働者の業務内容の明確化を促進していくことが必須になってきた。それには物流処理の内容を明文化し、そこにかかるコストも同時に明確化することで、荷主と物流業者が双方納得し透明化した取引関係になる。

コンサルタントが立ち入れる分野としては、それぞれの業務を工程分析しそのコスト要因とムリ・ムダ・ムラを排除する改善を行い、業務内容の見える化で、荷主と物流事業者双方の契約締結を支援することができる。同様に事業者と労働者の関係の中でも同様である。このような活動を通して新たな人材開拓も可能になるだろう。

◆付加価値を生む業務への集中・誰もが活躍できる物流への転換

 国土交通省の提案では、 ①トラック予約受付システム等の活用による荷待ち時間の短縮、②宅配便の再配達の削減、③中継輸送方式の導入等による働きやすい環境整備などが挙げられているが、これらはすでに試験的に実施されているものである。

 ただ、私企業が独自で進めているものが多く、予約受付システム、宅配ボックスの試験運用、中継輸送の実現のいずれをとっても業界全体で対応していかないと、個別対応ではコストの上昇や参加企業の伸び悩みなどが発生しやすい。パブリック性を前面に打ち出し、付加価値を生む業務への集中は前回のコラムで述べた「競争から共創へ」の認識を各企業が持つことで、可能となるのではないか。

 当社としても具体的な施策については、例えば、梱包の省ボリューム化(緩衝材の劇的変化改善提案など)による他の視点からアプローチはもとより「共創イズム」の普及に微力ながら協力していきたい。

次回は、ストック効果発現等のインフラの機能強化による効率的な物流の実現について、当社が支援できる分野の事例を交えて考えてみる。


著:長谷川 進(㈱東京ロジスティクス研究所 顧問)