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コラムColumn

総合物流施策大綱(2017年~2020年)について考える③ ~ インフラの機能強化により効率的な物流を支える ~

≪2018.06.11≫

◆はじめに

 総合物流施策大綱について考えるというテーマで、第一回はサプライチェーンの効率化と付加価値を作る物流として「競争から共創へ」と進化しなければならないこと、そして第二回目は物流を透明化し効率化するための「物流の見える化」について考察してきた。

今回は、インフラ強化という視点から考えてみたい。いわゆる物流を「支える」という観点である。政府はこれを以下の4項目の施策を推進することで社会インフラとして機能を向上させたい意向である。

①   モーダルコネクトの強化等による輸送効率向上

②   道路・海上・航空・鉄道の機能強化

③   物流施設の機能強化

④   物流を考慮した地域づくり

 これ等の項目の多くは、公的機関のリーダーシップが重要ではあるが、我々物流を活用する企業そして有効な活用方法を提案できるコンサルティング会社の理解と実行力がとても重要だと考える。

◆モーダルコネクトの強化等による輸送効率向上

 モーダルコネクトとは、従来のトラック輸送中心の状況からそれぞれの企業が物量や距離、環境負荷軽減、人材不足などの現状を直視し、可能な限りの輸送手段組み合わせを検討し、実践していこうというものである。

 従来は高速道路を整備することにより、トラック輸送の効率化やリードタイム短縮に貢献できると顧客も考えてきたが、上述の通り運転手不足や働き方改革の実施でトラックだけに対応を求めても、その能力に限界値が来ることが現実となりつつある。

 我々コンサルティング業としても、トラック輸送だけに頼らず輸送効率向上を図るための輸送手段の最適な組み合わせを常に考慮した提案を検討することが責務である。顧客とのコミュニケーションを緊密にし、適切なサービス(いわゆる過剰サービスの是非の検討も含め)を実現しつつ、本来の物流効率化を追求する姿勢が求められるだろう。

 昨今では、物流業界でもトラックのみでなく鉄道へのシフトやRORO船などの活用、モーダルコネクトと同時に輸送の共同化が進行し始めている。この観点から我々コンサルタントもモーダルコネクトを意識した調査や提案をお客様に対して積極的に行っていく必要がある。

◆道路・海上・航空・鉄道の機能強化

 荷主企業によるモーダルコネクトを意識した物流施策の検討は必要だが、行政としても国内外の物流を考えていくうえで様々な機能強化が求められてくる。ユーザー側ではいかんともしがたい課題ではあるが、今回、行政が主体となりいくつかの施策を推進する意思をこの大綱で示していることは、実現可能性が大きくなったといえるだろう。

 まずは、なんといっても道路輸送機能の向上が第一だろう。非効率な輸送を発生させている第一の要因は道路の渋滞であり、移動時間の4割が渋滞により損失していると大綱でも指摘している通りだ。渋滞を回避できる情報システムの整備や高規格の4車線道路の整備や料金体系の検討などが示されている。

 アジアにちょっと目を向けてみよう。広大な国土を有する中国でも沿岸部から道路網や物流施設の開発が始まり徐々に全国に波及した。また、タイなども道路整備に力を入れ、自動車部品工業が発展するなど交通網の機能強化が産業発展に寄与している。
弊社が最近力を入れているベトナムの物流においても、道路網の整備により国内の物流は勿論、アジアの内陸輸送(東西回廊や南北回廊など)でも高速道路の重要性は認識されており、その規格は日本のそれ以上の場合もある。ただ、高速道路料金については、物流事業で活用するには多少割高であり、まだまだコンテナ車両などの利用は少ないのが現状だ。しかしながら国内外の内陸輸送を活発化し経済成長を遂げるには道路インフラの整備は必須だ。これがベトナムのアジアゲートウエイ構想につながっていくと考える。

 話を日本に戻すと、トラック輸送の効率化としては(※1)ダブル連結トラックのような省人化対策も有効だ。一方、トラックとの機能連結(モーダルコネクト)という意味では、RORO船や内航船の大型化、これらを有効に機能させる港の整備も進めていかなければならない。コンテナ船3社が統合することにより、業界6位となり、グローバル物流の推進という意味では、競争力も大きく向上するだろう。

 航空輸送や鉄道コンテナ輸送についても限定された資源の中で、有効に活用できるような輸送力増強を検討してもらいたい。これらのすべての輸送モードは災害時におけるBCPを確保するためにも、お互いに緊密連な連携体制を常時整備しておくことも必要である

◆物流施設の機能強化

 物流施設については、我々コンサルタントが顧客のニーズを踏まえたRFP(Request For Proposal)を作成し、それに基づき①3PLの物流施設を選定する方法と②顧客自身が自社センターを構築する方法があり、企業の考え方でどちらかを選定することが一般的だ。

 一般に3PL事業者の物流施設は汎用性が高く設計されており、大規模な機械化はされずどうしても人海戦術になりやすい。ただ、顧客が固定している場合は、かなりの機械化、省人化が図れ、IOTもそなえた機能強化が図れそうである。また、自社で設置する場合は、投資額との兼ね合いもあるもののかなりの先進性を持った物流施設を構築することが可能になる。現在、弊社が関連している物流センター新設案件においてもかなりの機械化・自動化を取り入れている。

 物流拠点はその機能強化も重要だが、拠点設置場所の選定もコストやサービスレベル、共同化の実現性、人材供給などの各側面から重要な要素であろう。物流の結節点である高速道路やその料金優遇制度の有無なども物流施設選定の有力要因である。かつて圏央道が未開通の時点で圏央道の将来活用度を調査したことがあり、予想以上の物流拠点設置意思があり、高速道路の有意性が大きいことを実感した。高速道路周辺の物流団地では、トラック業者が連携し無駄な配車を排除し、効率的なトラック運用を可能とするため、可能な限りシステムを使ったトラック運用をすべきと考える

◆物流を考慮した地域づくり

 物流を考慮した地域づくりを考えるとき、地域特性として都市型、地方型という分類が一般的であろう。この分類でいくと相反する要因で対応策も2分されると考えがちだが、ベースになる価値観は利便性、効率性、安全性と既存施設活用+新規整備という考えかたになろう。

 ベースになる価値観は同じだが対応策は少しづつ異なるのかもしれない。著者は昨年、都市から地方へと移住した。都市型においては交通機関が発達しており、外出などの利便性は非常に高い。反面、渋滞などや物流需要が高いため、供給側の対応が少しづつ限界値に近づいているのではないか。一方、地方では公共交通機関が不便なため、一人一台に近い車社会でもある。物流においては、都市ほどの需要はないが、一方で高齢化が進む中での労働人口減少により供給側の課題も多い。

 要因は異なるものの、対応策としては物流の集約(共同化)や集配場の整備や既存施設(大綱では道の駅活用等がうたわれている)の活用、最近では貨物を客車に乗せる貨客混載も始まっており、それぞれに適合した地域の物流対策を採用していくことが重要だ。

 弊社では以前、ある量販店・スーパーに移動販売の積極推進を提案したことがあるが、当時はまだ過疎化や高齢化の進行度合いが今ほどではなかったことから、あまり進まない状況だった。これからの地方型の物流は昔の御用聞き販売やルート販売のような思想をもとにして、最新のIOT技術を取り入れた一段違ったロジスティクス展開が望まれるのではないか。活気ある日本を支える物流を弊社としても積極的に提案し、微力ながら社会に貢献していきたい。

 次回は、 災害等のリスク・地球環境問題に対応するサステイナブルな物流の構築について考えてみる


※1 ダブル連結トラック

トラック輸送の省人化を促進するために、通常の大型トラックの荷台を連結させることで大型トラック2台分の輸送を可能とするトラックを言う。国土交通省主体の実証実験で四社が参加している。通常の大型トラックに比べ、運転手工数もCO2排出量も50%削減される。(参照:国土交通省中部地方整備局Web


著:長谷川 進(㈱東京ロジスティクス研究所 顧問)