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コラムColumn

総合物流施策大綱(2017年~2020年)について考える⑤ ~ 新技術による物流革命 ~

≪2018.08.17≫

◆はじめに

 今回は総合物流施策大綱の5項目目の「新技術による物流革命」について、弊社もかかわっている案件も参考に考えてみる。

 総合物流施策大綱では、新技術による物流革命とそれを活用した新規産業の創出をうたっている。従来の物流機器の新技術は、約40年前に大きく進展した。それは例えば仕分けソーターの出現や自動倉庫の普及などが代表される。その後の物流機器の発展はそれらの基本的な技術を踏まえて処理スピードのアップや製作コストダウンなどリニア―に発展してきたと考える。

 しかしながらここ数年の物流機器の発展は、従来の技術は踏襲しつつも、まったく別のステージに移って、まさに新技術による物流革命という側面が出ていると感じる。まだ実用段階にないものも数年後には実用化され大幅な省力化や効率向上などまさに物流革命が起きようとしている。

◆情報革命によるサプライチェーン全体最適化

 昨今の情報革命の基本はインターネットの高度利用、物に情報を連携させるいわゆるIOT、世界中の情報を一括処理しそこから有効な情報として構築するBD(ビッグデータ処理技術)、そしてAI(人工知能)の活用で従来では予測できなかった事象を共有化しサプライチェーンの最適化が考えられる。

 IOT、BD、AIはこれからの産業界にとどまらず、個人の領域まで影響を与えることが予測できる。これらの新技術は個々の部分では具体化したものも多く、かなり進展した状況でもあり、更に研究も進んでいる。

 著者の関連のあるT社は5000万人の購買データを全属性・全年代を捕捉し、実際の購買時間を把握、小売業態別に比較分析を行い、買ったという事実データから無意識購買の把握まで想定できるサービスをしている。これは製・配・販の連携のスタートになる貴重なIT技術でありこれを共有することで将来的には、天気などの外部情報を加えAIを駆使してサプライチェーン全体の効率化や在庫適正化、輸送コスト削減などの可能性を秘めた先進技術に発展するだろう。

◆庫内移動手段と輸送の革命

 昨今のロジスティクス展示会でもよく展示されているが、庫内でのピッキングカートの自動追走機能や高速道路での後続車無人の隊列走行の実験は、労働力不足、とくにドライバー不足対策には大きな期待が寄せられている。 庫内でのピッキングカート自動追走機能はすでに実用化されているが、後者の隊列輸送やダブル連結トラックは実証実験段階にある。

 これらはいずれも、高度な情報化技術を使い実現していくものだが、とくに効果だけを見るのではなく、あくまでも多角的に安全性を担保できることが必須条件になるだろう。 様々なロジスティクス展示会の新規製品には、従来とはステージの違う製品が出てくると思うので目が離せない。

◆物流施設での革新的な生産性向上と省力化

 物流施設については、前のコラムでも述べたように、3PLの汎用施設では顧客が長期間使用するとは限らないため、特定顧客専用の自動倉庫などの重装備は設置しにくい。一方、顧客が固定し長期間使用する契約であれば3PL事業者でも顧客の指定する装備を設置することは可能である。

 自動倉庫の機能としては保管機能、迅速な入出庫、安全性の担保などいくつか重要な機能がある。それらを満足しかつ、もっと高性能でスペース効率が高く、従来の概念を超えた自動倉庫も出現し始めた。

 例えば、倉庫上部に設置されたグリット上のロボットが高密度に収納されたコンテナの入出庫を効率的に行う次世代ロボットストレージシステム(O製作所)はアパレルの小売業で採用されている。

 一般的にはAIやIOTを活用したロボット化が倉庫内の機器に装備されることで生産性の向上や労働者不足の解消、正確性向上などが望める。物流設備でも、もうそこまでIOT、BD、AI化の波が来ていると実感している。

◆ピッキングでの発想転換

 従来の商品ピッキングは、ピッカーがカートを引きながら商品をピックし ていく方式やピッカーが決められた棚を担当し、そこに流れてきたコンテナ に指定商品を入れる方式などが主流だった。

 最近では全くの発想の転換で、ピッカーは動かず該当するピッキング棚がピッカーの前まで自動的に移動し、そこからピックするというIOTを十分意識した方式を取り入れているセンターもある。

 ECの驚異的発展に伴い、小口当たりの商品数が大きく減少しそれに伴い小口数そのものは大きく増加していることからピッキングの生産性は低下傾向にある。この生産性を向上させるために各メーカーは音声システムやロボットピッキングなど全く新しい技術の開発を進めており、これからも発想の転換をした結果の商品が多く出てくることは間違いないであろう。

◆情報化、自動化に潜むリスク

 IOT、BIGDATA、AIなど多くの先進的技術がロジスティクス業界にも導入され始めており、その効果も大きく出てきている状況だ。これはこれからの労働力不足に対する劇的な解決法の一つでもある。

 しかしながら、これらの導入にはブラックボックスというリスクがある。今までの効率化や省力化の技術はそのルールについては、基本的に人間が決めてそれを機械化したものである。したがって何もなければ効率よく仕事が進むが、停電のような事態に至った時には人間がそのルールを知っているので、バックアップすることは可能であった。

 IOT、BD、AIは全く人間が関与しない部分が多く特にAIに至っては、平常時は非常に驚くような答えを出し、すばらしい効率化を得られるが、問題が起こったとき人間がバックアップすることはできないかもしれない。

 この課題はどのように今後解決していくべきなのか考えなければならないだろう。

 前回のコラム執筆時には北大阪地震が発生した。今回の執筆時には西日本豪雨が発生した。このような経験がどの様に今後生かせるのか、そして今回の豪雨に対するロジスティクスの対応はまだまだ原始的で完全ではない。早くロジスティクスのリスク対策を構築することが大切であると今回も実感している。

 次回は総合物流施策大綱の最後のテーマである「育てる」について考えてみる。




著:長谷川 進(㈱東京ロジスティクス研究所 顧問)