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コラムColumn

あなたの会社に物流力はあるか

≪2018.03.05≫

◆物流からロジスティクスへ

 物流の位置づけは、近年企業にとって大きなファクターとなっており、経営やその業績に影響を与えている。物流は経営にとって顧客との時間的、距離的、価値的な懸隔を解決する手段だと考えられている時代が長かった。もちろんそれには変わりはないが、物流という日本的考え方からロジスティクス*¹やSCM*²という欧米的な考え方に代り、物流の意義が大きく進展してきた。

 ただ単にお客様に商品をお届するということにとどまらず、CS*³は勿論のこと、自社のロジスティクス業務を効率化することで、経営へ大きく寄与していくことが、理解されてきた。いかにバランスの取れたロジスティクスを展開できるかが企業経営のポイントといっても過言ではない状況だ。

◆在庫の適正化

 在庫に対する考え方でも、例えばカンバン方式のようにジャストインタイムを前提に効率化する業態もあり、一方では在庫をリスクヘッジの手段とせざるを得ない業態もある。 

 たとえば、自動車部品を例にとってみると、自動車メーカーは当該部品を自社では保有せず、生産に必要な量だけをジャストインタイムで供給を受けるという体制が有名である。いわゆるかんばん方式である。 

 同じ自動車メーカーの部品でも海外展開している場合は、それなりのリードタイムが必要であり、ジャストインタイムであってもどこかに対応在庫がある。
特にサービス部品(ディーラー等への供給)などについては各国の需要量を予測し、顧客であるディーラーへの的確な供給サービスと自社の効率化をバランス化し適正な在庫による運用をすることでSCMの効果を得ている。

◆在庫とキャッシュフロー

 特に在庫問題は、キャッシュフローの大幅な改善をもたらす半面、リスク(過剰在庫による損失や災害による在庫不足リスクなど)も考慮に入れなければならない大きな課題でもある。

 また、在庫量を決定する要因として、需要に対する供給量の多寡やリードタイムが影響する。これをうまくコントロールすることで、品切れや過剰在庫の防止ができキャッシュフローの改善が可能となる。

 しかしながら大きな要因である需要を的確に予測する需要予測モデルは、その構築には統計的手法が必要であり、また需要変動要因をより現実的に把握することも必要であろう。これ等のモデルは、その適用業界や業態によって異なることが多いため、需要予測モデルは多くのチューニング*⁴要素がある。

 在庫の極小化が経営を良質化することが今日的には当たり前の考え方であるが、余談ではあるが30年前のブラジルのハイパーインフレ時には在庫品は翌日には必ず前日より高く売れるので在庫を多く持つほうが良いとされてきた。

 このように経済環境により在庫の解釈も変わってきているが、地球規模の資源の有効利用や3R*⁵の促進も含め在庫の極小化がSCMの目標ともいえる。

◆ECの急激な普及と物流力との競争

 昨今のECの急激な進展はロジスティクスの近代化が必須条件である。もはや通販会社であったアマゾンは物流会社といわれるほどに大きく変貌しロジスティクスにおいてリーダーシップを持ってきている。

 ロジスティクスが顧客満足を達成し、自社の経営効率化を実現し、環境問題も包含して解決していくことが企業としての使命であるとの理解も進んでいる。
ECの急激な普及は物流においては小口化の促進で基本的には物流対応力を強化しないと、様々の面で限界を迎える結果になりかねない。

 宅配に代表されるように、小口輸送の急増で配送能力の課題を浮かび上がらせた。現在は配送スピードの向上と正確な時間指定配送など輸配送に目がいっている。

 しかしながら、ECの急激な普及は物流力全体に大きな影響をもたらす。例えばピッキングの小口化によりピッキング生産性の低下や物流全体のコストアップが生じる。これらは企業単位での収益性や効率性を圧迫するだけでなく物流インフラの強化や人材確保対策、情報化による解決策、モーダルシフトの積極展開など社会的な対策も必須となる。いわば社会における物流力との競争ともいえよう。

◆あなたの会社に物流力はあるか

 それでは、あなたの会社の物流力がどの程度かご存知だろうか。

 自社の物流力を阻むいろいろな要因があるが、それを自覚しているかどうかで、市場での浸透力や成長力が大きく変化していくことは先述の例で明白である。アマゾンや花王やトヨタなどが商品力はもとより物流力について従来から研究を重ねそれなりの投資を進めてきたからこそトップ企業へと地位固めができた有名な事例といえる。

 さて、弊社では無料の物流診断というメニューを展開している。あなたの会社の体制の中で物流管理、情報管理、在庫管理、輸配送管理、包装梱包管理、コスト管理がどの程度実行されているかをいくつかの視点から評価し物流力のバランスを自覚いただくツールですのでぜひ、活用し、自社の物流力を再検証してみてはいかが。

■物流診断コンシェルジュ


<参照>

※1 ロジスティクス

元来、軍事用語であり、軍隊の装備品、糧食などの軍事品の調達、供給に関する軍事科学である兵站(へいたん)術、およびその具体的運営を意味している。この技術を企業経営における物資流動に適用したものが、ビジネス・ロジスティクスである。出典:日本大百科全書(ニッポニカ)


※2 SCM

自社内あるいは取引先との間で受発注や在庫、販売、物流などの情報を共有し、原材料や部材、製品の流通の全体最適を図る管理手法。また、そのための情報システム。出典:IT用語辞典


※3 CS

顧客満足


※4 チューニング

情報システムにおいて、各要因を調整し最適化を図る。


著:長谷川 進 (㈱東京ロジスティクス研究所 顧問)