コラムColumn
コンビニ電子タグ1000億枚宣言の実現性
≪2017.07.31≫
◆経済産業省がコンビニ電子タグ1000億枚宣言を策定!
経済産業省は、2025年までに、大手コンビニ5社の全ての取扱商品(推計1000億個/年)に電子タグを利用することについて、一定の条件の下で各社と合意し、共同で「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を策定した(※1)。
電子タグとは、電波を利用して非接触で個体を識別するツールだが、その歴史は古い。米軍が第二次世界大戦で、敵の航空機と戦車を味方と見分けるために初めて RFID を使い応用分野は徐々に広がってきた。
しかしながら、バーコードに代表されるように一般的な食品や日用雑貨品の流通についての情報化までには普及していないことが現実である。
◆25年前にRFID導入に向けて実証実験を行ったが…
小職も約25年前に化粧品メーカーでRFIDの実証実験を計画したことがあり、その期待効果は絶大だった。各種化粧品にICタグを貼付しレジ前で一挙に読み込み瞬時の決済が可能であり大変驚いた記憶がある。つまりレジ待ちがなくなるという画期的改革である。
しかしながらその実験は当時のRFIDは水や金属による電波遮断機能により読み取りの確実性が担保できなかった。またコストも高く、日用品雑貨などの低価格品には適用できない状況だった。このため、実証実験としてはパレット管理にとどまってしまった。
◆RFIDの将来の活用に期待
その後技術的進歩により、SUICAのような非接触ICカードも、RFIDと同様の技術を用いており、広義のRFIDの一種に含まれ、乗車カードや電子マネー、社員証やセキュリティロックなどの認証用など実用化されている。
今回、経済産業省の発表は、最も効果の高い流通(人手不足の解決策、SCMへの適用で適正在庫の確保、トレーサビリティによる各種信頼性確保など)について、その中核をなすコンビニとの共同推進をすることで、早期の実現を図るトリガーになるだろう。ただ、米国でも話題になった個人情報の保護などセキュリティの問題は十分に配慮しなければならない。
小職も初期に携わったRFIDの普及が現実的になることで、日本経済が抱える課題が解決されていくことを望んでいる。価格の低減が先か普及度合いの向上が先か、鶏と卵の議論ではあるが、経済産業省がコンビニとの共同で「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を示したことは大きな意義があるといえる。
2025年の電子タグ普及の実現を大いに期待したい。
著:長谷川 進 (㈱東京ロジスティクス研究所 顧問)
■参照
※1 「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を策定しました~サプライチェーンに内在する社会課題の解決に向けて~(経済産業省)