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コラムColumn

ロジスティクスにおける無人化実証実験

≪2018.11.26≫

◆はじめに

 国会では、入出国改正案をめぐり与野党での攻防が激しい状況となっている。外国人労働者の受け入れ拡大に向けた法案であり、現在の日本が抱える労働者不足の対応策として審議されている。しかしながら、ロジスティクスのおける労働技能は単純労働の部分も多く、たとえばピッキングや梱包などの作業はおおむね単純労働的であるが自動化されない限り人手不足はなかなか解消されない。

 また、輸送現場のドライバーは単純作業ではなく当然、日本の免許を取得し、経験があることが求められる。しかしながら運転免許には大型トラックや特殊車両には特別な免許が必要になり、なかなか外国人には取得しにくい状況にあり、この分野でも人手不足は顕著である。

 小職は現在伊那市に居住しているが、この近隣でも輸配送の無人化実証実験がすすんでいる今回はこれらの実証実験を少しご紹介しロジスティクスにおける無人化の輸配送実現の可能性を探ってみたい。

◆Society 5.0時代の物流(経団連資料一部引用)

 日本経済団体連合会は11月13日、「Society 5.0-ともに創造する未来-」を発表し、その中で物流についても、一層の多様化・高度化が求められるとして、提言をまとめている。それによると、物流は、いわば「経済の血流」として経済成長の実現に不可欠であり、企業の事業活動や人々の日常生活を支える社会インフラとして重要な役割を果たす。

 特に Society 5.0 の時代においては、eコマースの急拡大やサプライチェーのグローバル化等が進展し、物流には一層の多様化・高度化が求められるため、先端技術を実装することで、物流のあり方を大きく変えていく。

①   IoT 技術の実装により、貨物や輸送機関をネットワークにつなげ、物流をリアルタイムで追跡・管理する。

②  AI等を活用し需給等の予測を行うことによって、サプライチェーン全体の最適化・調整を図る。

③   自動走行やドローン、ロボットの活用によって代替可能な作業の多くを機械化し、人手を解放する。

④   都市部の膨大な物流量に対応するとともに、都市周辺部、中山間地や遠隔地にも効率的で迅速なサービスを提供する、としている。

◆実証実験の事例―1

 筆者が住んでいる長野県伊那市では、日本郵便がドローンを使った実証実験をしている。市内の郵便局と道の駅の2キロメートルの間をつなぐ。実験ではまず、客が通販を発注、郵便局員が注文票や配送用の箱をドローンにセットして道の駅まで飛ばす。道の駅で重さ1キログラムまでの商品を箱詰めし、郵便局まで送り飛ばすという流れになる。飛行は完全自動で全地球測位システム(GPS)などを活用する。

 また、伊那市が委託事業者を選定し、2021年度のサービス実用化を目指して今年度から行う小型無人機ドローンを用いた新たな物流ビジネスの構築事業を構築する予定だ。事業を担う委託事業者の代表にKDDIとゼンリン通信と地図情報の大手両社が市と手を組み、地元を含む合計10社の企業連携体で3年間の実証実験に臨む。民有地に比べてリスクが低い河川上空を基幹空路にして、伊那、高遠町の両市街地にある商店やスーパーと中山間地域を結ぶ配送システムの確立を進め、買い物弱者対策などにつなげることとなる。

 安全で確実なドローンによる荷物配送を実現する「空飛ぶデリバリーサービス事業」と位置付ている。さらに天竜川や三峰川、その支流の上空をドローン専用航路にして総合管制する「アクア・スカイウェイ構築事業」の2つのプロジェクトだ。

 この仕組みの特長は、高速データ通信規格「LTE」や3次元地図データなどを活用し、全国初の河川上空を空路にして、目視外飛行による物流システムの構築を目指す取り組みである。具体的には、河川上空は大型ドローンで運搬し、地域の拠点施設から各集落の公民館などへは小型のドローンで運ぶイメージである。将来的には市内全域を対象エリア、に戸別配送も目指す。詳細については、下記、伊那市のサイトをご参照していただきたい。

日本初! 河川上空を幹線航路とする新たなドローン物流システム構築と、官民協働によるサプライチェーン形成を組み合わせた物流の事業化に向け、伊那市が実証をスタート

◆実証実験―2

 伊那市長谷の自動運転バス実証実験。昨年度実施した自動運転バス実証実験を日常の交通手段としての需要や課題を検証するため、距離を延長して再実験を実施する。自動運転は、衛星利用測位システム(GPS)で位置情報を把握しながら走行するが、ルート上の全長約600メートルのトンネル内は、GPSの受信感度が落ちるため、地面に埋める磁気マーカーの磁気を感知して走る。 商品を道の駅に運ぶ「貨客混載」の実験も行う方針。運ばれた商品を道の駅から個人宅まで小型無人機ドローンで配送する実験も予定する。

◆実証実験(各地)

 伊那市だけではなく、いろいろな地域・企業が無人運転の実証実験を行っている。少し紹介してみよう。

①   遠隔ドライバー1名が2台の車両を運用する遠隔型自動運転実証実験

 産業技術総合研究所(産総研)は、福井県吉田郡永平寺町での「ラストマイル自動走行の実証評価(永平寺町)」での新たな実証として、1人の遠隔ドライバーが2台の自動運転車両を運用する、世界初の遠隔型自動運転実証を実施する。これは、高度な自動走行システムの社会実装に向けた研究開発・実証事業:専用空間における自動走行などを活用した端末交通システムの社会実装に向けた実証と位置付けている。

②   日本郵便のドローン活用(日本経済新聞引用)

 日本郵便は7日、福島県でドローン(小型無人機)を使った郵便局間の荷物輸送を始めた。操縦者が視認できない範囲を飛ばす「目視外飛行」では国内初の取り組み。2つの郵便局間でチラシなどを運ぶ。人口減少が加速する山間部や過疎地の輸送の効率化や人件費の抑制につなげる。ドローンは福島県南相馬市の小高郵便局と、同県浪江町の浪江郵便局の間の約9キロメートルを飛行。強風や雨、降雪の場合を除き、1日最大2往復する。機体は国産ドローン開発の自律制御システム研究所(千葉市)が提供する。実際に体感した南相馬市の市長は「物流の転換点になった。子どもたちにとって夢のある事業だ」と感想を述べたという。

③  日本郵便が自動運転車による郵便物等の輸送実験を行うと発表している。実験では東京都千代田区の霞が関郵便局から銀座郵便局への輸送を行うとのこと(日経新聞)。

今回の実験ではドライバーが同乗するが、将来的には完全無人での走行による労働力削減を目指すという。郵便関連では、米郵便公社(USPS)も自動運転システムの導入を検討している。こちらは、郵便物の仕分けや郵便受けへの投函なども自動化することを目指しているようだ(WIRED)

④   「空の物流革命」先陣争い ヤマトが無人輸送機 (日本経済新聞引用)

 ヤマトホールディングス(HD)は12日、無人輸送機を米国企業と共同開発すると発表した。ドローン(小型無人機)での配送実験などが世界で進むなか、ヤマトはより大きい「空飛ぶトラック」の実用化をにらむ。安全性や法整備といった課題は多いものの、空の移動革命は米中などで既に始まっており先陣争いが激しくなる。ヤマトが開発する無人輸送機は電動垂直離着陸型機(eVTOL)と呼ばれ、ドローンと飛行機の中間にあたる。

◆自動運転の課題

 各地の様々な実証実験を見てみたが、その結果安全・安心を担保した自動運転の仕組みを確立することが最も大切であるとの実感を得た。

 上記のいずれの実験もそれな例の成果を上げており、そこで発生する課題を明確にし、100%解決した時点で初めて実運用となる。いずれも実用化については2020年から2025年を目標にしており人手不足を解消するとともに安全・安心・効率化が達成できること切に願ってやまない。

 特にドローンについては空中を行き来するのでその規則を早く作り、適正運用を促進させてほしい。

著:長谷川 進