コラムColumn
トラックドライバーの働き方改革を考える
≪2019.01.09≫
◆はじめに
働き方改革について政府は目標として次のことを挙げている。(厚生労働省)
我が国は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面している。こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題になっている。
働き方改革については、総理が議長となり、労働界と産業界のトップと有識者が集まった「働き方改革実現会議」において、「非正規雇用の処遇改善」「賃金引上げと労働生産性向上」「長時間労働の是正」「柔軟な働き方がしやすい環境整備」など9つの分野について、具体的な方向性を示すための議論をしてきたようだ。
この中でロジスティクスに関する課題も多くすべてを論じるには多くの時間が必要であるので、トラックドライバーの働き方改革について焦点を当てすこし考えてみよう。
最近、中央高速道路を走行していると従来と比較して昼間の物流車両の増加と夜間の減少を実感するがこれは著者の感覚だけのだろうか。すこし夜間走行から昼間の走行に変化してきたのかもしれない。働き方を自律的に変えてきれいるのかもしれない。
◆トラックドライバーの実態
ドライバーの性別・年齢別構成は、40 歳~49 歳が36.3%と最も多く、次いで30 歳~39 歳(28.8%)、50 歳~59 歳(25.0%)となっており、29 歳以下は1.3%であった。今後、中心となるべき若年層の運転手離れは現実のことである(石川県の調査による)。
車種別・1運行の平均走行距離は全体で308km、平均実車距離は全体で260km であり、どちらとも大型が最も長く、普通が最も短い。車種別・1運行の走行距離帯の構成比は、全体で短・中距離が80.4%であり、普通のほうが大型に比べて短・中距離の割合が高い。
大型はやはり長距離が多く、普通は短・中距離という既存概念通りの結果である。中心となる車種は大型が約58%と半数以上を占めている。大型トラックを扱うドライバーの中心年齢は30~59歳と若年層は少ない。
手待ち時間のある運行は全体の約半分を占めている。この手待ち時間の解消がドライバーの働き方改革に大きく影響しそうだ。ただ現実はこの手待ち時間が解消されても、その分拘束時間は変わらないとの調査もある。手待ち時間は約2時間で長距離のドライバー拘束時間は、16時間にも及んでいる。この点を改革のポイントとしないとドライバー不足は増幅するのではないか。
一方でドライバーの荷役については、書面化したものが約58%で残りは書面化されていない。書面化されているものでも荷役料金が収受できたのが79%で残りは荷役料金を収受できていない現実がある。手待ち時間の解消と荷役料収受の実現が改革ポイントとなろう。
◆トラック事業の実態と改革ポイント
国土交通省資料参考
トラック事業の課題として把握
① 長距離運行として改善基準を超える16時間勤務が多い
② ただし、高速道路を使うと拘束時間も短縮する現実がある
③ 走行距離の長短にかかわらず手待ち時間は発生している
④ 集荷時のみでなく配送時にも発生している
⑤ 荷役時間が適正かどうかわからない
⑥ 手積みの場合は極端にこの時間が多い
⑦ 現場での依頼が多すぎる
改善の糸口を見つけよう
① 中距離輸送や共同輸送を取り入れよう
② できるだけ高速道路利用を促進するよう荷主と調整しよう
③ 手待ち時間の発生場所や原因を荷主と共同で検証し削減する
④ 着荷の時間指定の意義を再度確認すること
⑤ 荷役作業の効率を向上させる改善を行う
⑥ ユニットロード化を進めバラを減少させる
⑦ 荷役や付帯作業の内容を、書面やFAX・メール等で予め明確にする
◆現在の改革案と近未来に改革
現状のトラックドライバーが置かれた課題は述べてきた通りだが、大型トラックの女性ドライバー比率は2.4%に過ぎず、女性の持つ細やかな気配りや高いコミュニケーション能力、丁寧な運転などの特長を生かしていくことが働き方改革の一翼を担うことは間違いない。不足するトラックドライバーの救世主にもなるだろう。
もちろん施設内の女性トイレの増設や荷役作業のドライバーからの排除や荷役作業の機械化などで女性が働きやすい環境整備が重要だ。これはトラガールプロジェクトとして全国的推進している。トラガールは、ますます増加しているので全体の2%だった女性ドライバーが、ある中小企業では20%を占めるようになったが、将来は50%までもって行きたいとのことである。
現在の改革案の主項目は女性ドライバーの拡大策を積極的に実施することのようだ。トラガールのネーミングもよかったが、上記の施策を推進し働きやすい環境を作ることが必要である。近未来的には従来から言われているトラックからのモーダルシフトである。すこしづつ進んではいるものの爆発的な効果はない。また、商取引における過剰サービスの防止策の策定などもあり、運転手不足を補う策はあるだろう。
さらには、モーダルシフトには限界があるので適正なサービスを確保しながら、大型トラックから小型トラック、鉄道、国内船舶や過疎地における鉄道の貨客化などを組み合わせたモーダルコネクトを進めていくことがすぐにでもできる施策だと思う。まもなく実現するであろう、IOTや自動運転、BIGDATA処理、AI、ドローンの実証実験は順調に各地で進められており、前回のコラムでご紹介したように2020年以降には実現する技術である。
ドライバー対策のみでなく日本が抱える根本的な課題を全く新しい技術で根本から解決して快活することを強く望む。ロジスティクスの人材不足を解消する切り札として、前回のコラムでご紹介した各種の実証実験の成功と実施した場合の運用に対する規則や法律を早く整備することが重要だろう。
著:長谷川 進